個人的なヒストリーと役目と語彙

私はダンサーだ。大人になってからダンスに目覚めてこの世界で仕事をしている。自分の人生が、ダンスの世界に繋がっていたとは知らないで幼少期を過ごした。

自分の目は良い。もしくは、身体的なエネルギーや微細な気持ちの変化が身体に与える変容を捉える嗅覚がある。

この嗅覚のセンスは、教えられた訳ではなく、知らず知らずのうちに培ってきた類の生きる力と言った方が確かだと思う。

性格が優しいのか、それとも助ける人を選ぶ精神性なのか、受け入れて合わせる事に躊躇がないのも、ダンサー仲間と仕事を上手くするのに一役かっているのかもしれない。

いまの自分の役目は、ダンサーとして、舞台に立ち続けること。そのための素地を、今までの人生経験と特殊な技術の研鑽によって培ってきた。

人には一人一人、必ず何かの強みがある。それが求められ、合致して、不自由なく分かり合える仲間に恵まれながら生きられる環境に出逢える事は、この上ない幸運だと心から思う。

言葉を尽くしたり、語彙を増やして共通の理解を深める努力は、分かり合えない人同士に唯一時間を代償に与えられた選択肢だ。

雨の日の翌日の晴天の日に届いた傘の様に、タイミングが合わなければ全ては何事もなく、ただ過ぎていく。

時間のかかる精進も、個人的なヒストリーも、語彙に関わる理解も、自分の強みが活かせる世界に出会うまで繰り返すしかない。