【コラム】プロとして舞台に立ち報酬を貰うためにダンサーが何を考えるべき?

新作のクリエーションの段階で、いつも必要になる「作品」の哲学を探る段階。それが、リサーチです。カラダを使った舞台芸術を糧に生活するなら、身体とこころの関係って切っても切り離せないテーマだと思います。

こころ=身体は間違い?

つい先日、私が18歳の頃にお世話になっていた大恩師の先生が、亡くなられました。そのニュースを耳にした時に、私の中に不思議な感情がフッと浮かび上がってきたんです。

彼が教えてくれたこと、伝えてくれたコトは、それまで関わってきた全ての方の心の中にまだ生きている。だけど、もう笑顔で出迎えて一緒にご飯を食べたりすることは出来ない。

先生の身体はもう灰になって、抱きしめてもらうことは出来ない。でも、目を閉じて先生との思い出を頭の中で思い返すと、いつも暖かな気持ちにさせてくれる。まるで、目の前にいる気がする。

そんな、2つの感情が私の頭の中でぐるぐると回っていました。一体、私の中で何が不安で疑問を感じたんでしょう?

「踊る仕事」をあらためて考えた

単純に考えれば、身体が寿命を迎えれば人生は終わりますよね。だけど、こころって目に見えないその人の「分身」は肉体が消えてしまった後にも残って、誰かの目や耳に伝わっていく。

先生が亡くなられたってニュースを聞いて、改めて私にとって「生きること」とは何か?を考えるタイミングになったんです。

私がプロダンサーとして生活をスタートさせたのが、23歳のころ。まだ右も左もわからず、自信もなくて、人の目を気にしてビクビクしていた時と比べると、今の生活に至る道のりは決して「楽しく踊る」だけではなかったんです。

プロとして舞台に立って、お客様に何かを見てもらうのが仕事の人たちからすると、10分でも50分でも舞台に立つって重さは同じです。だから、その瞬間に「どう生きるのか?」は常に重要なテーマの一つなんです。

好きなことだけする?

私は特定の宗教に特別な関係がないので、自分自身の人生や生き方にこれといったNGやストップがかかることはありません。なので、好きだと思ったものを食べて、飲んで生活が出来ます。

何かに囚われるのが嫌いな私にとっては、とても有難いです。だけど、ある特定の作品の中で登場人物を演じたり、その作品のために選んだテーマによっては、「全てが自由」って状態ではなくなります。

つまり、振り付けのクリエーターやミュージシャンというCo-workerと一緒に、「今この瞬間だけはこうしよう!」ってお互いのルールを決めて舞台に立つってこと。

ケーススタディ:私の同僚

2015年頃から一緒に仕事をさせて貰ってるフランス人の振付家は、日本の文化にとても興味があるので「着物」を衣装にしたり、和太鼓を音楽に選んだり、歩き方には「すり足」を振り付けとして入れたりします。

また、去年からフランスに引っ越してきたスペイン人の振付家の同僚は、「飲み物」のテーマの中でも特に「牛乳」に注目して、飲むって何か?その仕草のもつ意味や、意図は何か??を考えて、作品を一緒に創っています。

2人とも、自分が選んだ「生きることのテーマ」を決めて、そのルールの中で作品を創作し、曲を選んだりコスチュームを選んで、私たちダンサーに託してるわけです。

誰かに託し伝えること

こころと身体の関係を、舞台に立って踊るって生業の業界に生きている私なりに考えた時、見えてきた一つの答えは「託すこと」でした。つまり、見てくれたお客様に何かを伝えること。

そのために、オーディションを受けて同じイマジネーションや哲学を持っている人を探したり、一緒に作品を創って舞台ってツールを使って共有して、社会にメッセージを発信していく。

自分だけでなく、周りにいる色々な人と一緒に一つのテーマについて考えたり、カラダを使って答えを模索するってあらためて大切なことだなって実感しました。